今回は前日、発酵食大学院通学3日目の学んだ内容についてお話していきます。午前は発酵に関わる微生物の働き。午後は腸内最近と人の共生でした。特に腸内環境の講義は面白い内容でした。
発酵に関わる微生物の働き
アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)黄コウジカビ:日本の国菌です。日本人ほどアスペルギルス属のカビを巧みに発酵食品作りに用いる民族はいない。もしコウジカビがいなければ日本食はなくなる。味噌・醤油・みりんや酢が作れなくなります。それだけコウジカビはなくてはならないものになっています。
役に立つカビ 麹菌(黄コウジカビ)Aspergillus oryzae
米麹→甘酒 日本酒(清酒)
豆・麦麹→醤油・味噌
麹造りで日本で一番役立っている菌株。アミラーゼによる米デンプンの糖化(甘酒、清酒の製造に役立つ)プロテアーゼによる大豆タンパク質の分解(醤油・味噌の製造に役立つ)
世界一のスター酵母:サッカロマイセス・セレビシエ Saccharomyces cerevisiae
酒(エタノール)を醸造する能力が並大抵ではないため、一躍人間に好かれる存在に。世界的に酒の醸造に用いられている。産業的なパンの発酵もこの菌種が用いられるため、「パン酵母」と呼ばれる事が多い。
エタノール耐性が20%程度までと極めて高いうえに酸性能力が高い為、日本酒のような高いアルコール濃度を持つ醸造酒の製造を可能にする。
チゴサッカロマイセス・ルキシー:Zygosaccharomyces rouxii
他にも役立つ酵母、チゴサッカロマイセス・ルキシーは、塩分濃度の高い食品で、主発酵酵母として働き、風味づくり・香りを出してくれる。(耐塩性酵母)
役に立つカビ:鰹節の優良カビ Eurotium herbariorum(ユーロチウム・ヘリバルオラム)
Aspergillus glaucus(アスペルギルス・グラウカス)
やや乾燥した環境(水分活性0.70~0.85)を好むカビ(好乾菌)。鰹節のカビ付けに使用される優良カビ。脂質分解により鰹節独特の香気成分をつくる。
酵母やカビについて学びました。カビ毒というものもあり人体に悪い影響を与えるので注意が必要なことも教えてもらいました。得体のしれないカビが生えた食品は、食べないのが無難。伝統発酵食品での麹菌など、しっかりと特定のカビの利用法が確率している食品は、通常大丈夫だそう。
清酒(日本酒) 麹菌や酵母が大活躍する伝統発酵飲料
日本酒造りの行程を学びます。「山もと」「山廃もと」とは、日本酒の「発酵スターター」である「酒母」の中において自然増殖した乳酸菌に乳酸を生成させる仕込み方法。山田錦や五百万石の米を削ります。この精米歩合で大吟醸酒や吟醸酒の違いになります。お米を精米することで雑味がないお酒ができるそうです。
私たちが食べているお米の精米歩合は90%ほどです
精米歩合60%以下のは「吟醸酒」
精米歩合50%以下なら「大吟醸酒」となっています。
原料は、米・麹・水・醸造アルコール。アルコールを添加しなければ、「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」
醤油・味噌 麹菌や酵母が活躍する伝統発酵調味料
醤油や味噌の作り方について説明があります。醤油にも様々な種類があり、醤油の公式な種類は5種!その5種について説明していきます。
濃い口醤油
大豆と小麦をほぼ等量使用し、大豆は蒸す。小麦は炒って砕き、両者を混合し、それに種麹を接種して「醤油麹」を作る。この麹を食塩水と混合してタンクに入れて「醪」とし、半年から約1年間発酵・熟成した後、搾って生の醤油を得る。それを加熱処理して製品とする。濃い口醤油は、醤油全体の約80%の生産量を占める。
薄口醤油
基本的な作り方は、濃い口醤油と同じ。製品の色を薄くするために、食塩水の量を多くしたり、醪の温度を濃い口より低くしたりする。また味をまろやかにするために、米を糖化させた甘酒を使うことがある。
たまり醤油
主原料は大豆で、小麦はわずか。原料を蒸し、「味噌玉」を造って食塩水で仕込み、タンクの底にたまった液を汲みかけながら約1年間発酵・熟成させる。
再仕込み醤油
食塩水の代わりに生の醤油を使用する。生の醤油でもう一度仕込むので「再仕込み」である。
白醤油
主原料は小麦で、ごくわずかに使用される大豆は炒った後、皮をむき、小麦も精白して使用する。約3ヶ月間、低温に保ち、美しい琥珀色の醤油になる。
味噌の作り方(米味噌)について説明があります。味噌の発酵の微生物は、醤油と酷似。味噌の主原料は、大豆。大豆に、混ぜる麹をどの原料でつくるかによって、米味噌・麦味噌・豆味噌に分けられる。地域性があり、九州は麦味噌・東海地方は豆味噌。その他は米味噌。米味噌は全体の80%を占めています。
何を作るかによって麹菌が使い分けられている
望ましい麹菌とは?大豆に対する米麹の割合が高い、甘味噌は糖化のみを優先的に行わせて、甘く仕上げる、高い温度55から60℃で仕込む。アミラーゼの活性が高いものが望まれます。
麹の割合が低い辛口味噌では、プロテアーゼの強い菌株が用いられる。大豆のタンパク質分解を優先的に進めさせるため。
大豆のみを原料とする豆味噌の製造の場合は、プロテアーゼの強い菌株が望まれる。使い分ける事が大事だと学びました。
納豆 日本が誇る無塩大豆発酵食品
納豆菌は、胞子細菌 賢い生き残り戦略をとる細菌。「胞子」という無敵の殻をスーツケースにして、自分の命を詰め込んで生き延びる菌。胞子は熱などのストレス環境に極めて強い。
納豆は、納豆菌の胞子細菌としての性質をうまく使って作られる発酵食品
Bacillus subtillis(natto) バチラス・サチラス・ナットー
稲わらに生息している菌です。稲わらを煮沸し、蒸した大豆を包んで40℃前後で18~24時間程度発酵させる。その後、10℃以下で熟成させ旨味を引き出す。
なぜ稲わらを煮沸するのか?稲わらには、納豆菌を含めて、様々な土壌細菌をはじめ多種の微生物が付着している(そのまま蒸煮大豆を包めば、腐敗してしまう)一度煮沸すれば、熱にy強い納豆菌の胞子だけを優先的に生き残らせることができる。そのうえで栄養源豊かな蒸煮大豆を包めば、胞子は発芽して栄養細胞に戻り、納豆菌だけによる発酵を進めることができる。
糸引き納豆のネバネバ成分
γ(ガンマ)ポリグルタミン酸。アミノ酸であるグルタミン酸が、10000個以上もγ結合という結合の仕方で長く連なったもの。
フラクタン(果糖が長く連なったもの)このような、長い鎖のような構造をもつ高分子が絡まって多量に存在するため、納豆は「糸を引く」のです。
2020年初頭に論文が報告 「発酵性大豆食品」の健康有用性について
納豆を多く食べる人は、死亡リスクが低下(国立がん研究センター)
脳卒中や循環器の病気のリスクについては男女ともに納豆の接種量が多いほど死亡リスクが低下する傾向があった。そうです。毎日、夫も私も納豆1p食べてます。
酢
お酒がないと、酢づくりはできない。お酒の醸造が始まった少なくとも数千年前には、自然環境の中の酢酸菌が酒に自然繁殖し、酢の製造法も発見されていたと考えられています。日本酒は米酢・ワインはワインビネガー・麦酒(大麦)モルトビネガー
ヨーグルト
ヨーグルトはもともとは環境中にいる乳酸菌で自然発酵。伝統的には、サンシュユなどの植物の枝を乳に浸して、ヨーグルトを作る(木の枝に乳酸菌が付着していると考えられている)現在は、ヨーグルト用の乳酸菌(菌体)が販売されており、それを培養して「菌種」として用いています。乳酸菌が生えると酸性になる→雑菌を寄せ付けず、日持ちがよくなる。世界中で、乳酸発酵により食品が発達(ヨーグルト・チーズ・漬物・なれずしな等)
ヨーグルトに使われる乳酸菌の種類と規格
国際食品規格を定めるCODEX委員会では、サーモフィラス菌・ブルがリスク菌。ヨーグルトの要件として、これらの2種の乳酸菌を使用することが求められている。日本では乳酸菌種の指定はないが、1mlあたり1000万個以上の乳酸菌(生菌)が存在していることが、ヨーグルト(はっ酵乳)の要件として求められる。
乳酸菌ってどんな菌なの?
グルコースの半分(50%)以上を乳酸に変換する能力を持つことが、乳酸菌の必須条件。発酵食品における乳酸菌の役割:乳酸を大量に生成する事によってpHを低下させ、酸性条件に偏らせる(pH4.5~5以下)これにより、一般的な腐敗細菌は繁殖しなくなる。つまり、乳酸菌の仕事はお腹に良いものを作ることよりも、腐りにくい状態を作り出すということ。
プロバイオティクス
腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に有益に働く生きた微生物。腸内環境、特に腸内細菌叢を整え、免疫活性化を促し、健康有用機能を引き出す。主要なプロバイオティクスとして、ビフィズス菌・乳酸菌などが挙げられる。
プレバイオティクス
大腸の細菌を増殖・バランスを改善・維持させることなどにより、宿主に有益に働く食品成分。オリゴ糖・食物繊維・難消化性デンプンなど(小腸で消化・吸収されずに大腸に到達して、腸内細菌のエサになる)
プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方の利益を同時に期待する、シンバイオティクスの概念もある。
プロバイオティクス・プレバイオティクスがもたらす健康有用効果。
腸内細菌叢の改善・免疫活性化・短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸)など産生。インスリン依存性脂肪蓄積の抑制・免疫制御・腸のバリア機能強化など
伝統ある発酵食品について学びました。食もグローバル化の時代です。このまま食文化が発達すると、発酵食品はら醸しが消えてあえもにになるかもしれない未来もあると先生はお話されていました。
毎日の食事で、発酵食品を取り入れています。継続は力なり、継続して自分に合った菌を摂って健康に生きて行きたいと思います。次回は午後の授業、腸内細菌とヒトの共生について学んだことをお話したいと思います。